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祝祭の国の王さまを知っているか?

そのむかし、王さまは荒野の真ん中に降り立った
かれは星を詠み 未来を詠う
王さまの回す みごとな歯車(システム)によって
そこは安寧のオアシスとしてうまれかわる

しかし
その王さまは “シニフィエとしての王”であった
かの王は確かに存在してはいるが
不思議なことに、その姿を見たひとはだれもおらず
ことばを交わしたひともだれもいないのだ
旅のものは問う
「国民(かれら)が 崇め したがうのは一体だあれ?」
国は平穏に 永きにわたり そこに君臨した
いつしか、そんな問いをうかべるものが
居なくなってしまうほど時がすぎた

王国《イヴリィカーニー》は
いまも王政国家として営みをつづけている
王さまは居ないが、たしかにそこに在る

『イヴリィカーニーのなりたち』より

 

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