カービィ族の身体は非常にミステリアスなものである。基本的に切創や挫創、熱傷といった外傷は残らず、破壊不能である。しかしながら外的ダメージが基準値を超えると極端に身体機能が低下し、行動不能になり意識を失う(この状態をバイタリティ・ゼロと呼称する)。また、ダメージ付与を連続して行い故意に“消滅”させることはできない。バイタリティ・ゼロ状態になった個体は、いくつかの方法(時間経過/栄養補給/睡眠)によって再び行動可能になる。
特定のカービィ族の個体が“消滅”するタイミングを仮に消滅期と定義する。(日ではなく期としているのは、特定の日を境に発生/消滅するのではなく、時間をかけて徐々に発生/消滅すると考えられているから)この消滅期を事前に予測することは不可能である。
こっから下は覚書き:
消滅前関わりのあった個体に、消滅した個体について尋ねると、ああそういえば、みたいなスタンスでパッと思い出して反応を示す。以下がその例。
-どっか行った
-旅に出た
-消えた
-飛んだ
-かえった(還った/帰った/孵った? ニュアンスは謎)
-ならされた(均された/慣らされた?)
わざわざ消滅した個体について思い出しながら話したり言及したりするのは不自然らしい。会話の中で登場する分には自然(ex:あいつが言ってたトマト畑のことなんだけど~等)
ちなみに発生期~消滅期までのスパンって、ヒト族でいう「寿命」とはだいぶ気色が違うものだから明確に名称および定義を分けておく必要がある。(まだふわっとしてる。仮に活動期と言っておこう)
「生まれる」「生む」「死ぬ」「殺す」などの概念も存在しない。「倒す」とか「やっつける」という言葉は頻繁に登場する。勝ち負けの概念はあるようだ。比喩的に「ころしてやる!」とか言う個体はごく稀にいるけれど、深い意味は考えず言っているだけだね。
自他共に、消滅に際する喜び/悲しみ/怒り/恐れといった感情は伴わないらしい。高度かつ複雑なコミュニティを形成する王国(イヴリィカーニーなど)においても、この事実は変わらない。さて、つらつらと基本的なことを書いてみたけどどう思う?球体類研究とかいう泥沼分野に転向してくるきみのために超ラフに書き下してみました。やっさしい!これからの活躍を期待します。ようこそ。センセイより。
白衣を纏い、前髪を綺麗に切りそろえた長い黒髪の女は、バインダーをパタリと閉じて顔をあげた。「まさか、渡してすぐ…この場で読み上げられるとは思わなんだ」
椅子の背もたれに顎を乗せて聞いていた、白衣姿の男は気まずそうに笑っている。
「感心しました。10書いてあるうちの0.5くらいは有益な情報がありましたので。具体的には最後の覚書の部分ですね。これはセンセイ自らのフィールドワークによるものでしょうか?非常に興味深いです」
男はギャグみたいにずっこけた。白衣に不釣り合いな真黄色のヘルメットが、ずるっと滑り落ちそうになる。髪はグレー、かなりの癖っ毛のようだ。
「ジョシュアくん…君はやる気があるのはいいんだけど、愛想がないね?!」
「自覚しております」
「まあいいけどさ…こんなところに来るなんて君も変わり者だ…大学院、出たばかりだろう?」
「ええ、はい、まあ。ところで私のデスクはどちらです、センセイ?」
「あのね、言っておくけど”センセイ”って私のファースト・ネームだからね?呼び捨てやめてくれる?」
「今のは敬称としての”先生”だったのですが」
「イントネーションがな〜〜!違うんだよなあ〜!」